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2022-10-18

ジャイアントスネークヘッド「チャドー」を追う旅 in タイランド シーナカリン・ダム 1日目

私が最後にタイを訪れたのは2020年4月。コロナウイルスの影響で海外の行き来に様々な規制がかかり出す直前だった。その数か月後から海外渡航にはPCR検査の陰性証明書やホテル隔離、自宅待機など様々な規制がかかるようになってしまい、一般的には実質的に現実味のないものとなってしまった。

あれから約2年半。ようやく海外渡航の規制が緩和されてきた。ワクチンを3回以上接種していれば大好きなタイ渡航もコロナ以前のように大きな規制なく普通に行って帰ってこれるようになった。それならば、行くしかない。

ダム湖の天然チャドーのみを狙う3泊4日の旅

狙いはダム湖に潜む10kgオーバーの天然チャドー(ジャイアントスネークヘッド)。10kgオーバーのチャドーは私が今一番釣りたい魚でもある。※写真は2019年8月に釣った5kgクラスのチャドー

今回もネックと2人で3日間ダム湖に泊まり込んで10kgオーバーを真剣に狙うという計画。ネックはタイでルアーメーカーエビの釣り堀を経営している若き起業家。どことなく与沢翼さんに似ている。いつもチャドーの釣りを全面的に協力してくれるだけでなく、タイの文化や食なんかについて教えてくれる。YouTuberとしての一面も持っているのでぜひ覗いてみてほしい。

タックルやルアーを厳選し、約2年半ぶりとなるタイ行きの飛行機に乗り込んだ。出入国の規制が緩和されたとはいえ乗客は少ない。半分以上が空席のためエコノミークラスでも非常に快適だった。

いつも観光客で大行列ができていたタイ入国時のイミグレーションも今回は約20分程度しか待たされずスムーズに入国。さっそく空港内で日本円50,000円をタイバーツに両替したが、ここ最近の円安の影響でたった13,025THBにしかならなかった。そのままSIMカードを購入しタクシーでネックの家に向かう。

3年ぶりの再会

約3年ぶりにネックの家族と再会しディナーを楽しんだ。子供たちは大きく成長していて、かろうじて上の子は私のことを覚えてくれていたみたい。ネックの家族は本当に明るくて暖かい。

多くの人々がコロナ不況にあえぐ中、ネックはこの3年で自身のビジネスを拡大しさらに金持ちになっていた。客足が遠のいた実店舗でのルアー販売から完全に撤退し、登録者数が20万人を超えるYouTubeからもほぼほぼ撤退。新たに可能性を感じたTikTokに移行し積極的に活動した結果、現在ではフォロワー数が50万人を超えている。TikTok : @nekfishing

これが大ヒット。土地・別荘・新車などを新たに購入しさらに与沢翼感が増していた。この大きなボートもその一つ。今回はこのボートでチャドーを釣りに行く。

2泊3日のシーナカリン・ダム釣行がスタートするもいきなり大トラブル発生

ネックの家で仮眠を取らせてもらい、車で5時間かけて向かった先はバンコクの北西に位置するシーナカリン・ダム(シーナカリン国立公園)。タイでは最も大きなダムらしい。不幸にもここ数日はタイ全域で大雨による洪水被害が相次いでいて私が滞在する全日程も大雨予報が出ているが、朝一の雰囲気は最高。風もなく湖面も穏やかで釣れる気しかしない。

さっそくNewボート”TikTok丸”を浮かべてエンジンを暖気しながらゆっくりとポイントに近づいていく。5分ほど走ったところで突然ネックが「Ahaaaa」と叫びながら頭を抱えた。

何か忘れ物をしたなと直感した。なぜならネックは本当によく物を忘れる。少なくとも私と一緒に釣りをした日に限って言うと一度たりとも”忘れ物をしたことがない日”がない。しかしそれのほとんどが小さな忘れ物でこれまではなんとかなってきた。ただ…今回はよっぽど重要な物を忘れたのだろう。リアクションで一目瞭然だ。そしてその忘れた物が何かを知った瞬間、今回の釣行は半分終わったなと思った。

「エレキのコントローラーを家に忘れた」

ボートでキャスティングするにあたってある意味では一番忘れてはいけないものかもしれない。音に敏感なチャドーはエンジン音を聞いて逃げてしまうだろうし、少しでも風が吹けばこんな大きなボートをエレキ無しで操船しながら釣りをするなんて不可能だろう。

家まで片道5時間。往復すれば今日1日が潰れる。そうしてまでエレキのコントローラーを取りに帰ったほうが絶対的に釣れる確率が増すのは間違いないが、ただでさえ2泊3日(実質2日半)しか釣りができないのに1泊2日(1日半)に削られるのも惜しい。私は5時間どころか宮古島から10時間以上かけて来ているのだから!

二人で悩んだ末、このままエレキ無しでなんとかしようということになった。

自分との闘い

ボートを操船してもらう助っ人を急遽雇い、ブロブロブロ…というエンジン音を水中に響かせながら釣りを開始した。正直釣れる気がしない。幸い朝一は風がなくベタ凪なのでポイントに近づいたらエンジンを切り何回かキャストしたらまたエンジンをかけて少し動く、というのを繰り返したが、この効率の悪さに私は少しずつイライラしてしまっていた。

「エレキさえあればもっと効率よく流しながらポイントを潰さず撃っていけるのに」

考えないようにしてもどうしても頭をよぎる、というか常に頭から離れないこの思い。大好きな釣りをしているはずなのに楽しさよりもイライラの感情が勝るという最悪の状態。釣りをする人であれば何度かこういった経験があると思う。特に海外での釣りとなるとここに来るまでに多くの時間と金をかけているということもあるし、3年ぶりのチャドー釣りということで何日も前からずっと楽しみにしてきた私にとっては自分の思うような釣りができないという状況に対してどうしても不満を抑えられなかった。

さらに追い打ちをかけるようにシーナカリン・ダムに降り注ぐ大雨。心が折れかけていた。

こんなにモヤモヤした気持ちで釣りをするのは本当に久しぶりだ。態度に出さないようにと必死に感情をコントロールしてはいたが、たぶん多少は変な空気を作ってしまっていたと思う。

ネックごめん。

タイ人との感覚の違いに戸惑う生真面目な日本人

結局そのままチャドーの反応が得られず迎えた15:00。1日目のタイムリミットが残り3時間となったところでネックが「1時間だけ休憩しよう」と言うのでダム湖に浮かぶレストランに立ち寄った。ここでご飯を食べて少し休憩するらしい。

日本人的感覚だと釣りができる時間が残り3時間しかないのであればこの際休憩を無しにするか、17:00まで釣りをしてその分早めに上がろうという選択をする人が多いと思うが、15:00という中途半端な時間であってもがっつり休憩を取るというのが少し違った感覚で面白い。以前ブラジルでの釣行でも昼は意地でも2時間休憩を取るという感覚に驚いたことがある。日本人はやたら時間にうるさい生真面目な民族なのかもしれない。

ネックと釣りをする時はいつもそうだが、今回も私はネックにお金を払ってガイドしてもらっているわけではない。交通費もボートのガソリン代も宿泊代も全て割り勘でやっている。だからというわけでもないのだが、タイで釣りをしている以上タイスタイルに合わせていかないといけないと思うので、しかたなく休憩に付き合うことにした。

パクチー&スパイシーなタイ料理

大きなクーラーボックスを開けて「何が食べたい?」と言われても…正直どれもそそらない。

普段食べなれないナマズやフナのような淡水魚だからということもあるが、とにかく臭いがキツイ。もし日本のレストランでこの臭いを放っていたら確実にその店は潰れる。分かり易く言えばそんな臭いだ。ネックの勧めでこの中では一番マシそうな小さいナマズを食べることになった。

日本人でも比較的好きな人が多いトムヤムクン(トムヤンクン)というタイ料理がある。このトムヤムクンという料理名は日本語で言うと「エビ入りトムヤムスープ」という意味で、

  • トム=「煮る」
  • ヤム=「和える」
  • クン=「エビ」

という言葉を並べたものだ。そのためエビ以外の食材でこの料理を作れば名前も変わる。例えば鶏肉を使えばトムヤムガイといった具合に。以前私はチャドーを使ったトムヤムスープ「トムヤムチャドー」を食べたことがあるが非常に美味しかった。今回の料理はトムヤムナマズということになる。※ナマズのタイ語が分からないが意味は同じ

その他にもたくさんのお勧めタイ料理をチョイスしてくれた。どれも日本では馴染みのない味付けだし基本的に辛いんだけど、ネックのおかげでこの味付けと辛さにも多少は慣れてきたし、むしろ今ではパクチーの風味や辛さを求めている自分がいるのに驚く。少し前まであんなに食べれなかったのに。パクチーなんてカメムシの臭いにしか思えなかったのに。

トムヤムナマズは先ほどの激臭ナマズを使ったとは思えないほど臭みが一切なく美味しかった。ネック曰くこの素材本来の臭みを消すためにタイ料理にはパクチーなどのハーブがたくさん使用されているらしい。確かに以前タイの市場を訪れた際に気温が30度以上ある環境下で無造作に積み上げられた肉や魚には大量のハエがたかっていて鼻がもげそうなぐらいの激臭が漂っていた。

日本のように冷蔵・冷凍管理されていない肉や魚の臭いを消すためにパクチーなどの強い匂いのあるハーブを使っているという話が本当かどうかは分からないが、もしそれが本当ならそれも先人の工夫。とても興味深いし、今では私もタイ料理が美味しいと感じるようになってきた。慣れなのかな。

マイペンライなタイ時間

ところで今何時?17:50!? 休憩を始めたのって15:00じゃなかったっけ?1時間と言って始まった休憩だったが結局そのまま釣りに行くことはなかった。てっきりランチだと思っていたトムヤムナマズはディナーだったらしい。

本当にどういうことなんやろう…

海外ではこういうことが多々ある。特に時間に対する価値観は大きく違う。幼少期から5分前行動!10分前行動!と教育されてきた我々日本人にとっては考えられないことが多々起こる。時間を守らないのは当たり前。日本人的感覚は世界全体で見たらほんの数パーセントしかないにも関わらず私たちはそれがスタンダードだと思い込んでしまっているだけなのだ。それはむしろ少数派。どんどん吸収していこう。

寝るのもここらしい。つまり外。かろうじて屋根はある。しかしこの布団…。固い地面と大量の虫に怯えるのが嫌だったのでビールを飲みに飲んで気絶することを選択した。この作戦はなかなか良かった。翌朝までがっつり爆睡。致命的な忘れ物をしたんだ。いびきぐらい許してくれ。

ジャイアントスネークヘッド「チャドー」を追う旅 in タイランド シーナカリン・ダム 2日目に続く

今回の釣行の様子はYouTubeでも公開しています。

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