ジャイアントスネークヘッド「チャドー」を追う旅 in タイランド シーナカリン・ダム 3日目(最終日)
夜は大雨が降ったり止んだり。ほとんど話せていない英単語の羅列とジェスチャーでお互いの夢について語り合い、たらふくビールを飲んだ。米粒大のウジ虫に毛が生えたような虫たちが足元でクネクネと踊るのを見て見ぬふりするために。”しらふ”では絶対に眠れない…「気づいたら朝だった」というのが理想だ。
ちなみにこのコテージ、中古物件だと40~50万円も出せば購入できるらしい。絶妙な価格設定。リアルに悩む。
小物釣り用のテレスコロッドが欲しい
ネックが朝食を作ってくれている間、宿から釣りをしてみた。なんせここはシーナカリン・ダムに浮くコテージ。辺り一面チャドーのポイントになっている。もしかしたら2kgクラスなら釣れるかもしれない。
そんな思いでちょい投げするとさっそく小さな魚の反応が得られた。明らかにこのタックルでは獲れないサイズ。300g程度の小さなチャドーだったためフッキングと同時に水面から飛び出してそのまま外れてしまった。
やはりこういったちょっとした空き時間を楽しむためにも海外釣行には小物用の遊びタックルを持ってきた方がいい。こんな宿に泊まるってことを事前に知ってたら絶対に持ってきたんだけど…ということはよくある。ガイドに糸を通した状態でそのまま仕舞えて3~10g程度のルアーを気持ちよく投げられるテレスコロッドがいいかな。帰国したらちょっと探してみよう。
稚魚ボールとママチャドーを探す
いよいよ最終日の釣りが始まった。まずは1日目・2日目と同様にカバーを撃っていく。
個人的にはクランクベイトやスピナーベイトで稚魚ボールを撃つ釣りよりも、こういったカバーの釣りや岸際をテンポよく撃っていく釣りのほうが好きだ。単純に楽しい。
しかし稚魚ボールを撃つのに比べるとこの釣りは難しい。なぜならそこに魚が居るかどうかが分からない状態で魚を探していく釣りだからである。ルアーを100回投げたらそのうちの90回以上は魚が居ない所に投げているかもしれない。魚が釣れない理由はいくつかあるが、「そもそもここに魚が居ないのでは?」と考え出すと次の選択肢は無限に増えてしまう。ルアーを変えてもアクションを変えても、そこに魚が居ないなら釣れるわけがない。やはりチャドー釣りをする上でポイント選びは最も釣果に直結する要素だろう。
それに比べて稚魚ボール撃ちはそこに確実に魚が居るということが分かった状態でルアーをキャストするため、釣れない場合に考えるべきことが少なくて済む。ルアーのシルエットを変えてみよう。ルアーのレンジを変えてみよう。ルアーの色を変えてみよう…といった具合に次の一手を考えやすい。デカいママチャドーを狙い撃ちでき、尚且つ普通の釣りよりも釣りやすいためタイではチャドーの子育てシーズンになるとこういった釣り方が非常に人気なのだ。
でもおかしいな。今もちょうど子育てシーズンのはずなんだけど…稚魚ボールがない。最終日の今日は一旦竿を置いて稚魚ボール探しに専念することにした。見落としがないよう全員で。
やっと見つけたママチャドー
1日目・2日目も稚魚ボールを見つけられなかったわけではない。2回遭遇してはいた。しかし風が吹いていてすぐに流されてしまうため断念したのだ。エレキが使えずエンジンで操船するしかないわけだが、動力が船の後方にあるため船をいいポイントにつけるには何度もギアを前進に入れたりバックに入れたりを繰り返さなくてはならない。そのたびにガガガッという大きな音が水の中に響いてしまい、さすがにこれじゃあ釣れないだろうと苦笑いするしかなかった。
稚魚ボールを探すこと30分。ようやく見つけた。真っ赤なチャドーの稚魚たちが呼吸するために水面に上がってくる。その後で緑の背中を丸出しにしてママチャドーが姿を現した。このボールには確実に親がついている。
しかも今なら風も弱くエンジンを切った状態でもそれほど流されない。最終日にして最大のチャンス到来。
ラパラのリストラップRR-9とRR-8をメインに使いながらバズベイトやスピナーベイト、ジャークベイト、ペンシルベイトなどいろいろ試した。しかしどれにも全く反応しない。ネックと手分けしてどちらかが水面を狙い、どちらかが潜らせるというような連携プレーなども試してもダメ。あの手この手で1時間半ほど粘ったが結局1バイトも得られなかった。なんとも温厚な性格の母親だこと…
野生のアジアゾウを発見
「Oh! elephant」
ネックが指さす方向には野生のアジアゾウが一頭、草をむしって食べていた。
そういえばシーナカリン・ダム周辺の道路には動物の飛び出し注意を促す道路標識が至る所に設置されていて、その標識のイラストがゾウだったことを思い出した。まさかゾウが飛び出してくることなんてあるの?と思ったが、実際にゾウに衝突するという事故はあるらしい。特に夜。ゾウは夜になると交通量の少ない道路まで出てくるというのだ。
居ることは分かっていてもなんとなく現実味がなかった野生のゾウは本当に居た。
無念…シーナカリン・ダムを去る
次の稚魚ボールを見つけた。稚魚のサイズは少し小さいがママチャドーの姿も確認済み。粘ればいずれ食ってくるはずだ。
だが船は少しづつ流される。稚魚ボールから離れるたびにエンジンを始動しガガガッとギアを入れてブロブロブロ…と稚魚ボールに近づいていく。ダメだ、どうしても釣れる気がしない。
そして度々降る雨。メンタルが壊れていった。
午後からはシーナカリン・ダムに猛烈なストームがやってくる予報になっている。それならば仕方がないし、むしろすでに私はヤル気を失っていた。全く釣れる気がしない。いつもなら「ドラマフィッシュ来い」と最後まで投げ切るところだが、今は大好きな釣りをしているにもかかわらず頭の中は楽しいよりもモヤモヤ・イライラに支配されている。こんな気持ちで釣りをしたのは本当に久しぶりだ。
3日ぶりに陸に上がった瞬間になんとも言えない脱力感に襲われた。話すことすら面倒臭いというか、なんて言ったらいいのか…とにかくもう何もしたくない、そんな感覚。私にとって3年ぶりとなるタイランド チャドー遠征は過剰に期待しすぎていた分、こうして後味の悪いものになってしまった。
また近いうちに
船を片付けてネックの家まで片道5時間の道のりを走っている間に不思議と気持ちを切り替えることができた。どうでもよくなったと言えば投げやりのように聞こえるが、次の釣りのことを考えられるような余裕が生まれたんだと思う。それもネックのおかげ。彼と居ると本当に楽しい。
言葉が通じず深い話はできないけど、常に前向きな姿勢や考え方は態度で伝わる。今回もたくさんのことをありがとう。
また近いうちに遊びに行きます。
撮影協力:TikTok @nekfishing
今回の釣行の様子はYouTubeでも公開しています。
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